「白い歯」への憧れが社会現象に

最近、にわかに注目を浴びるようになってきた「白い歯」。

歯の白さへの関心は「自分自身を磨いて光らせる」時代の到来を告げているのでしょうか…

「白い歯」願望に火がついた!?

一九九六年、にわかに「白い歯」がスポットライトを浴びはじめました。

それは社会現象といえるほどで、日本の文化史上ここまで「歯を白く」することに関心が及んだ記録は、存在しません。

日本人は身だしなみに気を遣う民族ですが、「お歯黒」の伝統に影響されたためか、歯に関することには無頓着でした。

しかし生活や文化習慣の西欧化につれ、「白く美しい歯」に対する願望が潜在的に広まっていたのでしょう。

最近の「白い歯」ブームは、隠れていた願望が一気に顕在化したものと思われます。

朝日新聞は「白い歯願望に歯科医戸惑い」というタイトルで、「白い歯になりたいブーム」をとりあげました(九六年七月二六日付朝刊)。

その記事には「それが社会現象にまで高まりつつある」ことと、それに相反する「病気なら治すが」あるいは「そもそも真っ白ではない」という従来のコンセプトにしがみついたような歯科医の意見が掲載されていました。

また、消費者の目で生活用品をテストし、手堅いことで知られる雑誌「暮しの手帖」も、「薬用アパタイトは歯を白くするか」というタイトルの記事を掲載しています(九六年十、十一月号)。

「CMがオーバーだとわかっていても、つい白い歯に憧れてしまう心理を巧みについています」とのコメントからは、「白い歯願望」がごく一般的なものであることがうかがい知れます。

この人気は「芸能人は歯が命」から始まった

琴星のごとく登場したこの現象、「芸能人は歯が命」というアパガードのCMが火をつけた、といっても過言ではありません。

そして実際に、ブラウン管に登場する売れ筋のタレントたちは、「白い歯」で誇らしげに微笑みかけてきます。

現在、テレビによく登場する日本人で薄汚れた歯の持ち主は、政治家諸氏と数十年前に作られた映画の登場人物くらいでしょう。

機会があれば当時の女優さんたちの歯に着目してください。

画像処理の問題とは無関係に、現在活躍するタレントさんの口元とは歴然と差があります。(余談ですが、大物を目指して清濁併せ呑むことに余念のない政治家が、歯まで黒ずんでしまうのは、職業病なのでしょうか)

社会が成熟し生活が豊かになるにつれ、歯科治療に対する患者の要求も変化してくるのが当然です。

この現象は、ブランド志向、グルメブームも去り、「他人にアピールするには自分自身を磨いて光らせる」時代が到来するという前兆なのかもしれません。