ノーメイクでも口元が美しければ、相手に良い印象を与えることができます。

明るく魅力的な「スマイル」ができるようになれば、心も自然にリラックスし、すべてに自信も湧いてくることでしょう。

自分の希望する色が「美しい歯の色」

歯の表面はエナメル質で覆われ、その中に象牙質、歯髄があります。

歯の表面についた汚れなどによる着色でないかぎり、歯の色は、すなわちエナメル質や象牙質自体のもつ色ということになります。

私たち歯科医が学生の頃、人種によって、あるいは年齢・髪の毛の色・目の色・皮膚の色などの要因により、だいたい歯の色は決定されると歯科大学で教えられてきました。

今でも相変わらず、そのように教えていると思います。

たとえば入れ歯の人工歯を選ぶ場合には、それらを基準に色を選ぶようなシステムが採用されています。

統計学的に見れば、確かにその選択法は適当といえるかもしれません。

実際、今までは「歯の色は生まれつきで固有のもの」という概念で、歯科医が「この人に対してはこの色」というように決定し、歯の色調を選択してきました。

もちろん、ある程度の希望は聞きとどけてくれましたが、「もっと白い歯を」と希望する患者が、説得されて妥協することもありました。

しかしよく考えてみると、あくまでもこれは統計です。

色調にはばらつきがあり、当然、個人差もあることになります。

同じような条件の人を二人ならべた場合に、同じ歯の色調をしている確率が高いというだけで、まったく同じという訳ではないのです。

明るい色調の人もいれば、暗い色調の人もいます。

「この色でなくてはいけない」という公式はありません。

ですから、あまり違和感を生じない程度に、本人の希望する色に歯の色調を変えることは、おかしいことではない、と私は考えています。

現代は、髪の色はもちろん、カラー・コンタクトレンズを装着すれば目の色でさえ自分の好きな色に変えてしまえる時代です。

「歯の色をもっと白く明るく変えたい」という希望に対して、「あなたの場合はこの色」と歯科医が決めてしまうのは、少し時代錯誤かもしれません。

頭を切り替える必要があるのは、私たち歯科医のほうだと、私は思っています。

生まれつきの歯の色調が自分の好みでなかったり、何らかの原因で変色してしまった場合には、「ホワイトニング…歯の漂白」や、その他の方法で処理すれば、変えることが可能です。

歯並びも歯の色を左右する

歯並びが悪いと、実際にはバランスの良い歯の色調であったとしても、少し距離をおいて見た場合に、奥に引っ込んだ歯だけが黒ずんで汚れたように見えます。

メイクアップで自分の顔に立体感を与えたい場合に、高く見せたい部分に明るいハイライトを、低く見せたい部分にはシャドーを、とコントラストを付けます。

その使い分けと同じ原理が口元にも作用するので、歯並びも歯の色と密接な関係にあります。

「審美歯科」とは

「歯の色や形を整えて、美しい口元にする」のは「審美歯科」の仕事です。

審美歯科ではどのような治療が行われているのか、ここで簡単にまとめておきましょう。

「美しさ」の回復を可能にした「審美歯科」

歴史を振り返ると、歯科医の主な仕事は、ムシ歯の治療や義歯の作製など、痛みをとることや噛めるように身体機能を回復させることでした。

そして、過去においては不可能と思い込まれ、人々の頭から忘却されていたのが「美観を損なわず、自然に見えるように歯を治す」ことだったのです。

まして、「歯の色や形、全体のバランスを整えて、美しい口元にする」ことなど、考えもつかなかったことです。

しかし、この十数年の歯科医学の目ざましい発達に伴い、これまでなおざりにされていた「審美的治療」が実現できるようになりました。

治療技術の進歩、そして「審美歯科」の出現は、自分自身の痛みや不快感という砕を越え、他人の目に映る自分、つまり他人の感覚すらも治療目的の一部に変えてしまったといえます。

「審美歯科」では、とくに「天然歯の色調をもつ修復材料」と「ホワイトニング…歯の漂白」が応用され、審美性の回復を可能にしています。

ただし、正直なところこの審美的治療にはデリケートなまでにセンスの良さが要求されますので、残念ながら、どの診療所でも行えるという訳にはいかないようです。

歯並びを治す「歯列矯正」も審美性の回復に貢献していますので、大きな範疇としては「審美歯科」に含まれますが、「歯列矯正」はそれ自身で「歯科矯正学」という独立したカテゴリーになっていますので、ここでは、くわしくふれません。